哀愁日記
底に哀はあるの。

もしくは、

「常識日記 文科系的日常」


西紀2012年6月分

Caution!

このページはあくまで小熊善之個人の責任において製作されており、坂村健先生及びTRONプロジェクト、パーソナルメディア社、並びにYRPユビキタス・ネットワーキング研究所は関与しておりません。
守秘義務の関係上、伏せ字になっている箇所があります。伏せ字の中身を御推測なさるのは結構ですが、あてずっぽうの内容を他者に広めて誤解を拡大再生産することだけはないようお願いいたします。

目次 | 前月 | 初日 | 末日 | 翌月

2012年6月1日(金曜日)
 朝から東大へ行って夜までイベント。
 途中、意識が飛びかけた。
 空腹感がないと、食餌の摂取を忘れる傾向が強くなり、水分もとらないで朝から荷物の運搬など重労働やらかした挙句イベント本編に突入とか。流石にしんどくなって休憩時間にお茶を飮んで凌ぐ。

2012年6月2日(土曜日)
 自宅のスイッチング・ハブを一台入れ替えた。
 AVラック(苦笑)に備えていた8ポートハブが満杯でカスケードをしていたのを、nasne導入に備えて16ポートハブにリプレース。で、玉突きで一番古いGS908GTがお役御免となった。
 しかし、GS908GTを買った2007年頃には、まさかGbE 8ポートで足りなくなる日が来るとは思わなかったわ。しかもAV機器が殆どを占めているとは。

2012年6月3日(日曜日)
 最近駄目だなーと思うのは、土日のアクティビティの低下。
 出かけたいと思っていたのに、体調が悪いとすぐに出不精状態に。
 じゃあ家にいて何か片付けているのかというと、そうでもなく、寝込んでいるだけだったりして。

 夜、NHKスペシャルを見ていたら、急に速報テロップが流れて、オウム真理教信徒の菊地直子容疑者の身柄が確保されたとかなんとか。


2012年6月4日(月曜日)
 内閣改造が行われて、5閣僚が交代。防相は森本敏氏に交代。ちょっと驚きの人選。元自衛官の民間人であるというのもあるけど、この方、麻生内閣時代に防衛大臣補佐官に補職されていたくらいの方ですので、どちらかと言えば保守系の人です。そういう人を民間から登用するという、二重の禁じ手を打ってきたという意味で、背水之陣を感じさせます。

 先だって、日本市場ではCHAdeMO対応の意向を示したVWが、何故国際規格としてのCHAdeMOは支持しなかったか、という話が「VWのEモビリティ戦略…CHAdeMOを採用しない3つの理由」という記事に載っていた。まとめると、

  1. 技術的にはよくできているが実装にはコストがかかる
  2. クイックチャージと従来型の充電口が別プラグとなる
  3. ソフトウエアのプロトコルがフォローしにくい
……てな感じ。なんか全部同じ事を言っている気がする。即ち、「面倒で金がかかる」と。
 CHAdeMOは自動車への充電だけではなく、自動車からの給電にも対応するなど、高機能な規格なのですが、それが仇になっている面があるようですね。

2012年6月5日(火曜日)
 ロケで上野動物園。

 「孤独なツバメたち デカセギの子どもに生まれて」が新宿K'sシネマで来週までらしい。
 万難排して観に行かねばなるまい。


2012年6月6日(水曜日)
 寬仁親王殿下薨去。

 昨日積み残したネタ。
 「TDSコースター事故、従業員指導の不足が原因」という記事が読売にあったので、オリエンタルランドのサイトに行って報告書を読んでみたんですが、これを「従業員の責任」とするのには無理があるんじゃないかな、と私は思いました。
 問題となった乗り物「レイジングスピリッツ」の安全バーは、

【出発操作前に一時停止操作が行われた状態】
安全バーを下げることができる
【出発操作後の一時停止状態】
安全バーを下げることはできない
という機構になっていると報告書で説明されています。
 その上で、当日の事故状況については、
出発操作と一時停止操作をほぼ同時に行ったため、当該乗り物は出発位置から動くことなく“一時停止状態”となりました。
乗り物が動かなかったため、乗り場の業務に携わっていたキャストは“出発操作前に一時停止操作が行われた状態”という誤った認識を持ちました。
※実際には出発操作の方がわずかに早く行われていたため、乗り物は “出発操作後の一時停止状態”にありました
と説明されており、このコースタの状態(ステート)を従業員が見誤ったのが原因であると断じられています。
 しかし、どうやら報告書を読む限り、この状態遷移は何らかのモニタやインジゲータがあるものではなく、停車中に安全バーが下げられるかどうかだけを手がかりに判断されるもののようです。個人的には、実際には動いていないコースタの状態を判別させるのは、心眼を要求する類の無茶であろうかと思います。
 再発防止策として、安全バーが上がったまま走り出さないよう手順変更などを行うと書いてありますが、そんなもの、安全バーが(空席を含め)全てロックされていなければ走り出せないよう、安全装置を備えれば済むことではないかと思いますが、どうなんでしょうか。

2012年6月7日(木曜日)
 食欲が少し戻ってきたけど、食べると辛い状態なのは相変わらず。
 冷蔵庫の中の食材が心配になってくる……。

 岩谷産業が5日の読売新聞関西版に「電力危機が招く経済的、社会的影響は深刻です」という広告を出したらしい。

電力危機が招く経済的、社会的影響は深刻です
日本のエネルギー制作における電力の役割は重要

暮らしと産業を支え、私たちの日常と切っても切れない関係にあるエネルギー。人類の明日を築き、未来を開くための命の源とも言うべき日本のエネルギーが、今危機に瀕しています。未曾有の震災と津波の脅威は、人々の命の営みのあり方そのものに大きな問題を投げかけました。そして我々はエネルギー政策の根幹に関わる重大な岐路に立たされています。英知を結集し、一日も早く再生可能エネルギーによる循環型社会を実現すべきであることは、国民共通の思いであり、言をまちません。
しかし、現在の危機を直視した時、景気の悪化、産業の空洞化など、原子力発電の停止による日本の深刻な電力不足は、わが国の産業に重大かつ深刻な問題を突きつけ、大きな影を落としています。
原子力発電への依存度は、わが国の近隣諸国をはじめ、世界の趨勢として日を追うごとに高まりつつあります。国際的に資源の争奪が激化する中、エネルギー自給が困難なわが国こそ、自らが勇気をもって、永年に亘り蓄積した原子力に関わる高度な技術力で、原子力発電の安全性の維持と向上に貢献するリーダー的役割を果たすべきではないでしょうか。
国内電力の3割を担う原子力発電の全機停止、生産活動の現象や消費の冷え込みなど、国民生活に大きな打撃を与えるばかりでなく、わが国の科学技術の衰退、国際競争力の低下を招きます。

今こそ冷静に現実と向き合い、原子力発電の安全性を高めた上で、安全が確認された原子力発電所を速やかに稼働させ、これを活用しながら、段階的に再生可能エネルギーへの移行を図っていく、そんな道をみんなで考えなければならない…。分散型で災害にに強いと言われるLPガス、水から生まれ、酸素と反応して再び水に還る、「究極のクリーンエネルギー・水素ガス」に、半世紀も前から取り組み、環境負荷のより小さな低炭素社会の実現を目指す。イワタニは、そんな思いでこの夏を迎えます。

岩谷産業株式会社
社長 牧野 明次

 内容は、本来なら広告を打ってまで主張するほどのことでもないと思う。
 関西圏は現在、おかしな主張を掲げるシンクタンクを抱えたおかしな首長に導かれ、皆連れ立ってヴェーザー川へと飛び込まんとしています。
 何分、遠い世界の話なので、木星に突入するシューメーカー・レヴィ第9彗星を眺めるような様相ですが、一介の企業がこれだけの広告を打つということは、岩谷産業の危機感は相当なものなのでしょう。

2012年6月8日(金曜日)
 ロケで浜離宮恩賜庭園から銀座まで歩いたりしてくたびれた。
 銀座では日枝神社神幸祭と偶然遭遇した。

2012年6月9日(土曜日)
 雨の中、新宿まで映画を観に行く。
 先日知った「孤独なツバメたち デカセギの子どもに生まれて」。
 日系ブラジル人出稼ぎ労働者の子供たちは、日本社会の中で、教育を受ける権利を十全に保障されず、日本に溶け込むこともできず、またブラジルに帰っても「見知らぬ故郷」に苦しむという狭間の人々になってしまいました。
 この問題は、90年代に労働力受け入れが始まった時に容易に予想できた筈なのに、対策が取られなかった、いわば「起こるべくして起きた」問題です。
 それどころか、問題の存在すら知らない人が多いようです。
 今、労働市場の開放を主張する向きがありますが、それが齎すであろう問題について、私たちは知らなければなりません。そしてその問題は既に起こっており、日本社会の中に解決されない問題として積まれてしまっています。
 更なる労働市場の開放を行うか否かは未来の問題ですが、既にある問題は片付けなければなりませんし、それは未来の問題を考える上で、重要な材料になると私は思っています。

2012年6月10日(日曜日)
 久しぶりにまったりと読書の日曜日。

2012年6月11日(月曜日)
 なんか、原発の再稼働が決まったと思ったら、今度は夏季の間だけ限定的に動かせとか言い出しているらしい。原発なんて動かし始めてからフルパワーに持ってくまでに一ヶ月半とかかかるような代物なのに、そうポンポン動かしたり止めたりできると思っとるのか……。発電を止めたところで、福島第一を見るまでもなく、炉内の燃料の崩壊熱を排出し続けねばならないわけで、危険性という意味では稼働中でも停止中でも大差がない。
 そんな意味のないことをするくらいなら、先送りになっている火力・水力発電所の定期点検を実施すべく、余力を有效利用すべきだろうと思う。
 原発は定期点検を終えても止めたままで、火力や水力は定期点検をすっ飛ばして稼働させたまま、だなんて、これがマトモな状態だと考えている奴は頭がおかしい。
 どんなプラントだって、点検もせずに動かし続ければ、事故の可能性は高まる。破断の時が来れば、その影響は決して小さくはない。

2012年6月12日(火曜日)
 なんか厚労省がレバ刺しの禁止を決定したとか
 個人的には食べないから良いんですけど(おいこら)、なんか理由が、O157などの腸管出血性大腸菌を殺菌できないからだとかいう話で、変だなー、と。そんなのγ線でも当てりゃ殺せるやん。
 日本では食品への放射線照射は、馬鈴薯への芽止め目的の物くらいしか許可されていませんが、国外ではそこそこ利用されている殺菌方法の一つです。(参考
 従って、「殺菌方法がない」という考えは誤りで、食文化との兼ね合いを考えるのであれば、照射殺菌を検討すべきではなかったかと思います。

2012年6月13日(水曜日)
 「最古の「戸籍」木簡、太宰府で出土」と、考古学上の発見の話題。
 一応文献史上では、670年(天智天皇9年)に「庚午年籍」を作ったという話があるわけですが、現物が現存していないため、果たして本当に作ったのかすら議論の対象となっていました。
 もう少し年代が下って690年(持統天皇4年)に「庚寅年籍」が作られたという記録も残っているわけですが、こちらも現存はしていないのですが、これに基づいて口分田の班給をしたとかいう記録もあるので、一応は完成を見たと考えられていました。
 今回の木簡は、状況証拠から見て、この庚寅年籍からの差分情報ではないかと考えられるわけで、日本古代史に一つ大きな足跡を残す発見ではないかと思います。

 「明治38年までに納付を!放置違反金で警察ミスという記事があって、一体これはどういうバグだろうかと首を捻る。
 記事が正しいとすれば、文書作成日を入力すると自動的に期限等が計算されるそうなので、計算上のバグであろうと思われるわけだが、平成24年3月21日が明治38年7月18日になる間違いはどうやったら作れるのか、ちょっと思いつかない。


2012年6月14日(木曜日)
 朝っぱらから腰をやってしまい、ボルタレンと腰痛ベルトのお世話になる羽目になった一日。

2012年6月15日(金曜日)
 「死因究明2法が成立 遺族の承諾なしで解剖可能という記事があり、「死因究明等の推進に関する法律案」と「警察等が取り扱う死体の死因又は身元の調査等に関する法律案」が可決成立した模様。
 以前書いたのですが、死因の究明は何も司法警察活動のためだけに必要なものではなく、公衆衛生や医学的見地からも必要なものであって、事件性の有無はその一部に過ぎません。一般論から言えば、医学的な検屍があった上で、事件性がある場合は警察に通報が為される、という形のほうが、他の死因(特に公衆衛生に関わる伝染病)の見落としの可能性を下げられる点から望ましいと思っています。

 「新世代のロケットエンジン開発成功を発表 宇宙開発に弾み=中国」と、中国がケロシン‐液酸エンジン「YF100」の開発に成功したと発表したそうな。
 RD-120ベースの推力120t級のケロシンエンジンですか……。
 最近のロケットエンジンのトレンドは、めっきりケロシン‐液酸ですなぁ。
 日本が拘っている液酸‐液水エンジンは、理論上比推力が化学ロケットの中では最も高いとか、燃焼ガスが無害なH₂Oだとか、良い面も確かにあるのですが、一方で燃焼ガスが軽いため推力が稼げない(だから固体燃料ブースタが必要になる)とか、液体水素の温度(-252.6℃)が低すぎて燃焼時との温度差が大き過ぎるとか、分子が小さ過ぎてどこからでも漏れるとか、比重が軽すぎてタンクが大きくなって構造重量が嵩むといった弱点もあります。
 そこで、酸化剤は液酸のままで、燃料にケロシンを使った方が扱いやすいよね、推力も大きくなるし、という話が以前からあります。人類を月に送り込んだサターンVの一段目に使用されたF-1エンジンもケロシン‐液酸エンジンでした。
 一方で、不完全燃焼で煤が出たり、比推力を上げるのが難しかったりという難点があったのですが、ソヴィエトはこれを克服し、RD-170という人類最高とも言われるロケットエンジンを開発しました。RD-170は大推力と高比推力を両立させたエンジンなのですが、酸素リッチなプリバーナを500気圧で燃やし、燃焼室圧力も250気圧に達する二段燃焼サイクルとか、過去ソビエトロシア以外で実現できなかった超技術を採用していることで知られています。なんせ冷戦後の米国がロシアからエンジンをライセンスして製造しようとして果たせなかったという話があるくらいです。
 さすがにそこまで行かないにしても、第一段目に要求される性能を考えると、液酸‐液水よりも、ケロシン‐液酸の方が適切である、という意見は以前から存在しました。また、有人宇宙飛行を考えれば、点火したが最後、あとは打ち上げ花火な固体ロケットブースターを使用しない方が安全上望ましいことは言うまでもありません。
 最近話題になったSpace X社のFalcon 9も、一段目にはケロシン‐液酸のMerlinエンジンを束ねて使用しています。
 とまあ、これが現在のロケットエンジンのトレンドなのかなぁと思うわけなのですが、じゃあ日本はどっちに行くつもりなのか、と言われると、LE-Xとか、今一つ良く見えないのが難しいのですよね。


2012年6月16日(土曜日)
 同窓会だか同期会だかのために上京してきた両親を迎えに東京駅へ。
 母は(骨盤骨折やらかしたこともあり)隨分と久しぶりの上京だった模様で、見事に待ち合わせ場所と違う改札から出てしまうのであった。
 とりあえず八重洲の地下街で食餌をし、その後、浜離宮恩賜庭園へ。
 というのも、日頃「お前の研究所はどういう仕事をしているんだ」と訊かれても説明が行き届かなかったので、百聞は一見に如かず、とばかりにユビキタス・コミュニケータによるガイドツアーを体験させてみようかと。
 時間の関係でコースの半分くらいまでしか回れなかったが、それなりに楽しんだ模様。
 善哉善哉。
 二人を宿にまで送り届けて、終わる。

2012年6月17日(日曜日)
 「もうすぐ太陽圏脱出? ボイジャーの周りで宇宙線が急増」という記事があった。
 1977年の射上げから35年。太陽系の端と言えるところまでようやく辿り着いた。
 後もう少し、原子力電池の寿命が残っているので、まだもう少しの間、彼女は僕達に新しい知見を与えてくれるだろう。
 こういった科学への貢献が絶大であるという点で、米国は他国の追従を許さず、世界の頂点にいることを実感させる。

2012年6月18日(月曜日)
 TOP500が更新されて、日本の誇る京コンピュータは二位に後退。首位を奪ったのは、ローレンス・リバモア研究所Sequoiaで、16.32Peta FLOPS。IBMのBlueGene系列機で、京の1.6倍近い性能ですな。というか、IBMのBlueGene強え。Top10に4台か? TOP500にIBMだけで213台とか。HPが次いで138台、クレイが26台。
 強いな、やはり。
 国別計算力で言うと、米国が台数(252台)含めてぶっちぎりの一位。二位日本と三位中国が僅差。世界のHPCパワーの大部分を米国が占めるという、ある意味順当な結果に。
 米国の至る所は遠いな。

2012年6月19日(火曜日)
 颱風4号襲来。

 「改造B-CASカード販売で初の逮捕」、という記事(過去日記)。
 まあ、有料放送をタダで見れるという性質上、いずれ逮捕者が出るとは思っていましたから、不思議はないのですが、しかしまた京都府警か。
 個人的には、そろそろ警察組織の見直しをして、サイバー犯罪のような広域犯罪を担当するFBI的組織と、地方警察という形に分けたほうがいいんじゃないかと思いつつあり。


2012年6月20日(水曜日)
 颱風一過、真夏日襲来。

 昨日「中之島図書館を廃止へ 橋下市長と松井知事という衝撃的なニュースが走った。
 府立中之島図書館は百年程前に住友家の寄付によって開設された図書館で、公共図書館としては珍しい古典籍やビジネス書などの専門図書館としての性格を有しています。建物は重要文化財であり、日本を代表する図書館の一つとして、海外での知名度も決して低くない図書館です。
 ご存知の通り、図書館は公共教育を担う教育施設の一つで、民主主義を支える知の自由を保証する機能を有します。民主社会においては有権者一人一人が政治、経済、社会等の問題に関心を持つことが望まれ、その為の知識を得られる場所として図書館は機能します。また住民のより良い暮らし、より高度な活動を支える情報サービスの提供もまた重要で、中之島図書館のような専門性の高い図書館は、広く一汎に利用されるわけではありませんが、住民の諸活動をさらなる高みへ引き上げる力を持っています。
 中之島図書館は大阪市役所、大阪市中央公会堂と並ぶ一等地に立地し、中之島を「芸術の島」にしようという構想とも決して矛盾しません。
 それを「あんなところに図書館を置く必要はない」とは凄い物言いです。
 どうやら大阪府知事や大阪市長にとっては、図書館とは文化施設とは成り得ないもののようです。
 あるいは、府民・市民が知恵を付けることに、何か隔意のようなものでも抱いているのでしょうか。昨今、識字教育への支援を廃止するなどの報もあり、「民は知らしむべからず」的発想があるのではないかと勘ぐりたくなります。


2012年6月21日(木曜日)
 夏至。

 「「失敗国家」ランキング、ソマリアが5年連続首位 日本は悪化」という、有り難くないニュース。
 平和基金失敗国家ランキングは、それが全てではないというものの、毎年決まった指標で国家を採点しているという点では、ひとつの目安となりえます。それが悪化したんですから、いい気分にはなりませんね。
 で、全データが公開されている2006年から今年までのデータをDBにぶち込んで、日本の数値を拔き出してみました。

Japan in Failed States Index
Year 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012
Mounting Demographic Pressures 4.0 4.1 4.3 4.2 4.0 3.6 8.3
Massive Movement of Refugees or Internally Displaced Persons 1.0 1.1 1.1 1.1 1.2 1.1 4.0
Vengeance-Seeking Group Grievance 3.8 3.8 3.8 3.8 3.6 3.9 3.8
Chronic and Sustained Human Flight 2.0 2.0 2.0 2.0 2.1 1.8 2.1
Uneven Economic Development 2.5 2.5 2.5 2.5 2.6 2.3 2.0
Poverty, Sharp or Severe Economic Decline 2.6 2.6 2.3 3.1 3.5 3.5 4.0
Legitimacy of the State 1.8 1.8 1.8 2.0 1.8 2.0 2.5
Progressive Deterioration of Public Services 1.0 1.2 1.2 1.2 1.3 1.7 5.0
Violation of Human Rights and Rule of Law 3.0 3.5 3.4 3.4 3.2 3.0 3.2
Security Apparatus 1.0 1.0 2.0 2.0 2.1 2.0 2.0
Rise of Factionalized Elites 1.3 1.3 1.7 2.0 2.2 2.6 2.6
Intervention of External Actors 4.0 3.6 3.6 3.9 3.7 3.5 4.0
Total 28.0 28.5 29.7 31.2 31.3 31.0 43.5
Rank 135 / 144 164 / 177 163 / 177 164 / 177 164 / 177 164 / 177 151 / 178
Standard 31.7 31.7 32.2 32.4 32.4 32.4 37.9
 「Mounting Demographic Pressures」(人間集団圧力の悪化)、「Massive Movement of Refugees or Internally Displaced Persons」(国内外難民の大規模移動)、「Progressive Deterioration of Public Services」(公共サービス悪化の進行)といった項目が、数値を大幅に増しています。恐らく東日本大震災の影響でしょうが……。
 小幅ながら継続的に増大している項目で気になるのは、「Poverty, Sharp or Severe Economic Decline」(貧困、急激なもしくは極度の経済的衰退)、「Legitimacy of the State」(国家の正当性)、「Rise of Factionalized Elites」(利己的エリートの擡頭)といった項目でしょうか。
 地震の影響は時間が経てば解消することが期待されますが、秩序の低下を示す指標の悪化は気になります。
 ともあれ、日本は数値を大幅に悪化させ、順位を一気に13も上げました。
 悲しむべきことです。

2012年6月22日(金曜日)
 先日、原子力規制委員会設置法成立により、同法附則によって原子力基本法第二条が改正されたそうな
 で、周辺国がわーきゃー言っているんですが、どうなんだろう?
 断片情報ではわかりにくいので、現行法と、改正後の該当部の文言を比較してみる。
改正前
(目的)
第一条  この法律は、原子力の研究、開発及び利用を推進することによつて、将来におけるエネルギー資源を確保し、学術の進歩と産業の振興とを図り、もつて人類社会の福祉と国民生活の水準向上とに寄与することを目的とする。
(基本方針)
第二条  原子力の研究、開発及び利用は、平和の目的に限り、安全の確保を旨として、民主的な運営の下に、自主的にこれを行うものとし、その成果を公開し、進んで国際協力に資するものとする。
改正後(変更部分を強調)。
(目的)
第一条  この法律は、原子力の研究、開発及び利用(以下「原子力利用」という。)を推進することによつて、将来におけるエネルギー資源を確保し、学術の進歩と産業の振興とを図り、もつて人類社会の福祉と国民生活の水準向上とに寄与することを目的とする。
(基本方針)
第二条  原子力利用は、平和の目的に限り、安全の確保を旨として、民主的な運営の下に、自主的にこれを行うものとし、その成果を公開し、進んで国際協力に資するものとする。
2  前項の安全の確保については、確立された国際的な基準を踏まえ、国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資することを目的として、行うものとする。
 第2条の1項はほぼそのままなので、原子力利用が平和目的に限られているのは変化がない。単に、「安全の確保」について、安全保障に資することを求めている。実は原子力規制委員会の方が、安全保障を設立意図に含めているので、こっちにないとそれはそれで片手落ちとも言えるわけ。
 で、まあ、ちゃんと条文の確認もせずに吹け上がっている人達もいるわけで、何事もきちんと裏付けを取ることって大切だなぁと思うことしきり。

 裏付けと言えば、先日「国内民間シンクタンク、初めての「軍事力リポート」を発表=中国」というニュースがあって、中国の“民間”シンクタンクによる報告書が出たというので、日記のネタにしようかとあれこれ検索してみたのだが、原本どころか「中国战略文化促进会」なる組織にすら辿り着けず放擲していた。
 で、海自のサイトに「中国の研究機関が発表した「2012年日本の軍事力評価報告」を読んで」というコラムが出て、流石は本職……と思って読んでみたら、自衛隊ですら原本が手に入らない、と書いてあってポカーン。こうなると、本当に現物があるのかどうか疑わしくなってくる……。


2012年6月23日(土曜日)
 体調がイマイチで、寝たり起きたりになってしまった。
 飛鳥山博物館のドナルド・キーン展に行きたかったんだけど、明日は取材なんだよなー。

2012年6月24日(日曜日)
 東京ミッドタウンでの取材が早めに終わったので、ドナルド・キーン展の千秋楽に滑り込む。
 キーン先生に縁の文学者たちの直筆の手紙などが色々展示されていて、眼福なり。太郎冠者を演ずる若かりしキーン先生の写真とか。
 残念ながら、権利の関係から、図録等の販売はないとのことで、最終日に急ぎ足とはいえ、観ることができてよかった。

 次はBTRON Clubの発表原稿を作らねばなぁ……。


2012年6月25日(月曜日)
 ガラパゴス諸島ピンタ島に棲息するピンタゾウガメの最後の一匹「ロンサム・ジョージ」が死んだ
 推定100歳以上。
 確かに絶滅は今日なんだろうが、実際の所、最後の一匹になった時点で絶滅が予定されていたわけで、それがたまたま今日だっただけで、実際の絶滅はとっくに終わっていたという見方もできるか。
 Point of No Return的考え方って、時々重要だと思うのだけど、変に一般化すると「私たちは既に死んでいる」みたいな話に陥りかねないので、注意が必要なんだよね。

2012年6月26日(火曜日)
 「Amazon.co.jp、「Kindle近日発売」と案内開始」と。
 実際にどの位利便性が上がるのかが、勝負所かな、とか。
 例えば、現在大手出版社の電子出版は、紙版より遅れて電子化されるのが通例で、同時リリースはニュースになるくらいの珍しさ。講談社が漫画本について、6月から同時リリース予定と言っていたけど、今6月だな、そういえば。
 個人的には、ソニーのSony Readerでも思ったんだけど、6インチで800×600ドット程度では、日本語を表示するにはかなり厳しいと感じた。AppleのRetinaじゃないけど、小さな字を表示するためじゃなくて、字を鮮明に表示するために、今の倍の解像度は欲しい。
 しかし解像度が倍になればドット数は四倍になり、ラスタライズにかかる処理が増大する分、プロセッサもメモリも必要になって……という痛し痒しな面はあるのだけれどね。

2012年6月27日(水曜日)
 IHIから、HTV-3に搭載される再突入データ収集装置i-Ballについての発表が。
 既に「宇宙から燃えずに地球に帰ってこれるんです。そう、「i-Ball」ならね」という記事でも紹介されていますが、HTV-2で既にREBR(Re-Entry Breakup Recorder)というアメリカ製の再突入データ収集器を搭載してデータを取っているのですが、一部データが非開示でして、やはり自前でやらないと駄目だよね、と。
 結局、先進技術というのは、自分たちで手間暇掛けて苦労して手に入れないと、足許見られるんだよ。

2012年6月28日(木曜日)
 先月報じられた放送番組の国会図書館保存構想に、業界が反対しているらしい
 事後検閲って検閲じゃないじゃんと思うわけですが、それはともかく、現実問題としてそこら中で録画されている放送をもともと放送は(録画・録音で)固定されることを前提にしていない。なんて意識で作ってるから、色んな問題が起きているのではないかと……。
 私は以前から記録しておけ派なので、放送局側の意見を理解することは困難なのですが、かつて音盤の登場が演奏・上演に新たな価値を付与したように、放送録画が放送業界に齎す新しい価値があるだろう、と私は考えます。

 先日たまたま観ていたNHKワールドWave Tonightでの特集「「医療保険改革」は合憲か違憲か 〜米大統領選挙の行方を左右する最高裁判決〜」が全文書き起こしになっていた。ありがたいことです。
 それにしても、国民皆保険制度が違憲性を問われる国っつーのも、凄まじいものだな。


2012年6月29日(金曜日)
 昨日書いたオバマケアの件は、合憲判決が出た
 これで米国での国民皆保険制度施行に障害は一応なくなったわけだが、今後も議論は続きそうではある。

 日本一発砲事件の多い街として知られる北九州市で、ロケットランチャーが発見されたとか……。
 ううむ。どう見てもRPGです、ありがとうございました。
 ヤクザの抗争に対戦車ロケット弾とか使うんですか。どこのホテル・モスクワだよ。


2012年6月30日(土曜日)
 初鰹に誘われて、クレヨン社の加藤宅へ。
 食べきれないほどの料理を味わう。