哀愁日記
底に哀はあるの。

もしくは、

「常識日記 文科系的日常」


西紀2003年12月分

Caution!
このページはあくまで小熊善之個人の責任において製作されており、坂村健先生及びTRONプロジェクト、並びにパーソナルメディア社は関与しておりません。
守秘義務の関係上、伏せ字になっている箇所があります。伏せ字の中身を御推測なさるのは結構ですが、あてずっぽうの内容を他者に広めて誤解を拡大再生産することだけはないようお願いいたします。

目次 | 前月 | 初日 | 末日 | 翌月

2003年12月1日(月曜日)
 世界AIDSデーでした。
 国連のアナン事務総長はBBCのインタビューに「世界の指導者たちはAIDS問題を放置している」答えたそうな。さもありなん。
 今喫緊の問題は、イラクを含む中東の石油利権を白頭鷲のように啄ばむことであって、AIDSの蔓延を食い止めることではない、ということなんでしょう。
 先般UNAIDS(国連エイズ合同計画)WHOが出したレポートでも、HIV感染者は全世界で推定4000万人、2003年の新規感染者500万人、死亡者300万人、そしてなおも増加中とのことでした。
 特に南部アフリカが酷いと言うことですが、東アジアや日本も他人事ではありません。厚生労働省による「HIV感染妊婦の早期診断と治療および母子感染予防に関する基盤的・臨床的研究」が「99〜02年の外国人を含めた感染者の割合は、妊婦10万人当たり10.5人のため、国内の妊婦の感染者は推定で年間125人になる」という結果を出したと報道されました
 先のUNAIDSの報告書でも、「Japan is seeing a steady increase in the number of reported HIV infections. The number of new HIV cases reported annually has doubled since the 1990s to more than 600 in 2001 and 2002. This rise has been accompanied by an increase in other sexually transmitted infections over the same period, with the rate of Chlamydia rising by over 50% among women since 1995. There is also evidence of more widespread sexual activity among Japanese youth (reflected in the increase in the percentage of young people who have had sex by the time they turn 19 years of age).」(29ページ)と報告されております。90年代の二倍になっており、着実に増加中。おまけにクラミジア感染の増加まで指摘されてます。AIDSに限らず、性病全体の蔓延が見られる、と。
 充分な公衆衛生体制が敷かれていないか、あるいは体制に大穴が開いているものと考えられます。事態がこのまま進行すれば、破滅的な未来が算出できてしまいますね。
 この国って、どういうわけかこういう、統計的に未来が見通せるような場合にも、全く手を打たずに破綻を招来してしまうことが少なくないように感じるんですけど、なんでですかね?
 なんにせよ、放置できる問題じゃないはず……。

 関わり合うのは上策じゃないとは思っているんだけど、一応書くだけは書いとこう。
 週刊ダイヤモンドの2003年11月8日号に載った『いくら失敗しても懲りない「日本発の標準」づくりの愚』について、坂村先生が週刊ダイヤモンド編集部に反論文を送っています。一応、こちらに再反論が載っているようですが、肝心の坂村先生の反論状がどこにも載っていません(苦笑)。ダイヤモンド編集部が何を考えているのかは私の与り知るところではありませんが、坂村先生の言い分がまだ公になっていないのは問題だと思いますね。
 私の手許には週刊ダイヤモンド編集長宛になっているA4 3枚の反論状ありますが(^^;、勝手に公開していいもんじゃないし……。一応、坂村先生の反論状はまず最初に署名記事の事実誤認の部分について指摘しており、再反論の方はそれに全く触れておりません。
 現状ではお互い、好き勝手なところに文句付けてるような格好になってしまっています。


2003年12月2日(火曜日)
 乙一の「失はれる物語」が見世棚こさえて並べられているのを見てびっくり(失礼だな!)

 逢沢一郎外務副大臣自民党の外交部会に於いて「自衛隊に在外公館の警備をさせる法改正を検討している」と発言したと報道された。この件は、川口順子外務大臣記者会見の中で、「問題意識というレベルの話」という段階であると説明された。
 記憶によれば、この問題は1996年12月〜1997年4月のペルー大使館占拠事件、2002年5月の瀋陽領事館の駆け込み事件を経て議論されていた筈だ。比較的最近でも、衆議院武力攻撃事態への対処に関する特別委員会あたりでされていた。
 どんな国にも、自国の国民と財産を守る権利と義務があり、大使館内が治外法権であることを考えれば、日本大使館の中に警官を配しようが自衛隊を駐屯させようが、相手国(接受国)には関係ないことと言える。相手国の心証がどうなるかはともかく。米国の場合は、大使館の中に海兵隊員が配備されている。
 自衛隊の場合、こういう警護活動そのものが自衛隊法を改正しないとできないという制約はあるが、そのこと自体に問題があるとは思えない。というか、イラクみたいな政情不安な場所だったら一個中隊くらい配備してても、どこの国も文句は言わないと思うが……。
 ただし、言うまでもなくこの措置で自衛隊が行動できるのは大使館の中だけの話であって、今回のような移動中の襲撃にはやはり対処できない。
 そんなわけで、ちと冷静に、分けて考えないとマズイかな、と。

 「母親殺害:動機はアニメ番組の影響 初公判で検察が陳述」ねぇ……。
 いや、21世紀にもなってJ.T.クラッパーを持ち出さないといけないのかとか思わなくもないし、検察だって冒頭陳述で被告が犯行に至った経緯を説明するのに出しただけで深い意味はないだろうけど。でも、世の中には暴力的なアニメやゲームが子供に悪影響を及ぼすだとか主張したり、あまつさえ名指ししたりする連中がいたりするわけよ。リストを見ると日本からも「Power Rangers Ninja Storm」がノミネートされてるから、きっと日本の子供たちも悪影響を受けているのだろう。
 アホかっての。
 泥酔した一部の馬鹿が罪を犯すからって憲法に修正条項を入れるくらい馬鹿気てる。大抵の子供だってちゃんと分別くらいあらぁな。
 大体そんな事言ったら、いい大人が既知外のタワゴト真に受けてポアだポアとか言ってVX作ったり、定説では死んでないとか言ってミイラを囲んだり、この足の裏では死んでしまうとか言われて全財産投げ出したりする方がよっぽど問題だろうが。
 結局は個々人の問題に帰結しちゃうのよ。覚醒剤みたいに科学的・医学的に問題があるわけじゃないんだから……。
 とりあえず回收かかる前にエヴァのDVD買っとくか?

 続報を綴りたくはないのだが、アイレディース宮殿黒川温泉ホテルのハンセン氏病元患者宿泊拒否問題。
 ホテル側が記者会見を開いて自分達の意見を述べたようなので、責任上、書く。
 今更どう言い繕っても、逆転は無理のような気はするんだけど。
 ホテル側の受け入れ態勢が間に合わないというのが理由だったのであれば、なんで他の旅館を手配しなかったのか、という疑問がでちゃうでしょ。中途半端に開き直って「県が悪い」だなんて、無粋ってもんでしょう。
 こりゃ本当に熊本地方法務局が起訴まで持ってくかも知れんな……。


2003年12月3日(水曜日)
 [ピー][ピー]が5日で[ピー]が9日ですか。
 って、なんも書いてないのと一緒じゃんかこれじゃ……。
 クギササレテマスカラ、ハイ。

 「英国で相次ぐ、携帯電話基地局の「打ち壊し」」との報。
 これ、本当に21世紀のイギリスのニュース? 19世紀とかじゃなくて?
 原文にも一応目通したんですが、「serious illnesses」とだけあって、実際にどんな病気かは書いてないので、なんとも言えないんですが……ガンマフィールドじゃあるまいに、携帯電話の基地局にそれほどの害があるとは思いにくいんですが。あるというなら、然るべき専門家を呼んできて調査してもらうのが先だろうに、いきなり実力行使って、野蛮人か何かか?
 明治時代の日本で「電話でコレラが伝染る」なんてデマが飛んで、マスクをして電話するなんて光景があったそうですが、技術の進歩は人間の進歩を伴わないんだなと、しみじみ思い知らされますね。

 そろそろ「毒を喰らわば皿まで」になりつつありますが、アイレディース宮殿黒川温泉ホテルのハンセン氏病元患者宿泊拒否問題。
 黒川温泉観光旅館協同組合を正式に除名になったそうな。ホテル側の誠意がどうこうってのは私にはわかりませんが、主張が二転三転したのは印象が悪かったですな。
 個人的には、会社とホテルで行われた意思決定経過を知りたいですね。是非公判が開かれて欲しいものです。

 台湾の総統選が近いもんで、中国の威嚇が凄いわ。


2003年12月4日(木曜日)
 逆風に羽ばたく烏は、速度ゼロ。朝陽の中で輝きにけり。

 通勤途中、自動車のハザードランプのことに思いを巡らせる。
 縦列駐車の列の中の車が、ハザードランプを点滅させていた場合、往々にして右舷の方向指示機しか見えないので、駐車表示なのか、あるいは車線に出るための右折表示なのか、俄に判別できないことがある。
 右舷、あるいは左舷のみを見ただけで停車状態なのだと瞭然な方が望ましいと思ったりしたわけだが、巧い解決案もまた思い付かなかった。ハザード専用のランプを新たに用意するのが一番なのだが……。

 NIFTYblogサービスを始めるとか言ってたけど、いきなりFTRONの王様がおっぱじめてる(^^;
 blogかぁ……このチンケな日記書くのにひぃひぃ言っている我が身には過ぎたる道具ですな(掲示板すら作ってないんだし)
 TRON関係の報道といえば、昨日の日刊工業新聞の一面に「TRON革命」なんて連載がありましたね。会社でふと目に付いたんですけど(^^; 最近露出が多くて、全てを追いかけていられないんですが。

 最近気が疲れる報道が多いのですが、「抗議訪米に中傷メール、英文4通 「地獄へ落ちろ」というのにもやっぱ疲れた。
 多分、記事の中で触れられている団体ってのは「平和のためのヒロシマ通訳者グループ」だと思うんだけど、抗議のメールを送る方も送る方だけど、わざわざアメリカくんだりまで出かけてって抗議しようって方も同類だと思ったけどね。
 言論の自由を尊重するならば、互いに尊重しないと駄目なわけよ。一方的に俺の言うことを聞けってのは、どう考えても自由じゃないよな。退役軍人会を中心とする米国の方々が原爆投下を是認したいのも判るし、被爆者が原爆を絶対悪としたいのも理解できる。でもお互いが己の主張のみを叩きつけあったら、テロの応酬と何の違いがあるっていうの。
 この世界に害悪を撒き散らしてるのが、こういった正義病に罹った連中でして、考えるための材料を提供しようというスミソニアンの当初計画に対して両方から横槍を入れたんですよ。「原爆投下は正義だった」と言って原爆展を中止させようとした連中も、「原爆は絶対悪だからいかなる理由も認めない」と資料提供に条件を付けた連中も、私に言わせりゃ皆同類
 そうやって相手の言うことなんて聞きもせず、相手の立場を慮りもしなかったからこそ、戦争する羽目になったんだろ……。

 結局自衛隊送るのか……。怪我人くらいで済んでくれると嬉しいけど。
 外務省が亡くなった二人の乗っていた車の写真を公開したりしてるけど、プロパガンダ臭くて嫌になる。そうやって俺たちに「テロを憎め!」と指し示されてもねぇ……。
 個人的には、あんな軽防弾車輛なんかじゃなくて、陸自軽装甲機動車でも貸与することはできなかったのだろうかとか思うんだけどさぁ。直接犯人は探して司法の裁きを受けさせにゃならんとは思うが、それと自衛隊の派遣はまた別の問題だしね(自衛隊を送っても大使館や外交官が安全になるわけじゃない)。
 国連主導による平和執行部隊ができてからにすべきだと思う。それなら、犠牲が出ても(ある程度)諦めがつくから。


2003年12月5日(金曜日)
 Adobe Creative Suite予約開始。
 Adobe Design Collection買ったのって去年だったような。なんか釈然とせんなぁ。(でも多分InDesign CSのために買うだろう)

 来年三月の任期切れを前に、台湾の陳水扁総統がとうとう国民投票法を手に入れた。立法院での審議過程において骨拔きになったとの評も伝え聞くが、とにかくその気になった場合、選挙で台湾独立の是非を問えるようになったらしい。
 その前後から、中国側が報道媒体を通じてしきりに台湾を牽制するようになって、最近では米露両国まで巻き込んで一大キャンペーン化しているのだが、日本の報道での扱いは殆どないようだ。キリバスが台湾と国交を結んだために中国がキリバスと断交、なんてのもあったり(11月末)。
 みんなキリキリしてるんですよ。誰も戦争なんて望んじゃいないもんで。
 しかし外交的弱者の立場から脱却し、国際舞台において相応の地位を得、影響力を保持したいという台湾側の野望もわからんではなし。陳水扁総統の再選工作って面もあるだろう。
 今一番この問題で頭が痛いのは、東ティモールという前例があることなんだよなー。東ティモールは独立できたのに、なぜ台湾が独立したらいかんのだ、と言われると返す言葉もない。だからどこの国もよってたかって台湾に「国民投票をするな」と言うわけだ。
 沖縄なんぞ本土より台湾に近いので、結構モロに影響を被りそうな気がするんですが、日本政府はこの問題をどう考えてるんでしょうかねぇ……。

補遺:「“5日”には何があったの?」というご質問には残念ながらお答えしかねます。9日(予定)をお待ちください。喋れば喋るほど立場ってやつぁ窮屈になるわけで。
 個人的には驚いたり呆れたり疲れたり納得したりしました。


2003年12月6日(土曜日)
 川口発の最終電車は東十条止まりで、王子神谷まで歩く羽目に。
 間拔けだ〜。

 昼間のうちに「美しい夏キリシマ」を鑑賞しようと岩波ホールへ出かけたら、「満席」の札が……。
 単館上映だし大丈夫だろうなんて高括ってましたが、意外や意外。
 というわけで、今日は見れなかったので、いずれ再戦を期す。

 夜は川口へ。またまた某所へ上がり込んで鍋を頂く。
 珍しく少しお酒を頂いたりして。
 ああ、なんかまた仕事が増えて忙しくなった気がするなぁ。
 やりがいがあるうちはなんでもOKヨ。


2003年12月7日(日曜日)
 いつも通り、6時に目覚ましは鳴ったが……止めて二度寝して起きたら昼近かった。

 取り敢えず説明会なんぞ行って蘊蓄を聞いたり書類を貰ってきたり。
 こういうのも結構エネルギーいるんだよね〜。
 書類書きって苦手。

 んで、「美しい夏キリシマ」を鑑賞してきました。
 最初になんと監督の舞台挨拶があってびっくり。しきりに、「今の風潮はあの時代に似ている」と訴えていました。
 昭和20年8月(多分)7日からの、ある片田舎の戦時風景を描いた一作。
 空襲中に倒れた友人を見捨てて逃げたことに苦しむ主人公。夫の戦死公報以来半ば自棄になって男と寝る女。その女に貢ぐ食料を倉庫から盗む兵士。戦傷で南方から帰ってきて拔け殻のようになった男。本土決戦に向けて訓練に明け暮れる部隊。特攻出撃を前に恋人の前に現れる青年。沖縄から来て、帰る場所も頼るべき人も喪った少女。原爆で故郷を友人を家族を破壊された娘。そして悠々と空を飛ぶグラマン。
 美しいだけに、悲惨です。そしてそれらがすべからく「戦時下の日常」であることが、悲愴です。
 私が暮らしている社会が、戦争をしていることが日常である社会でなくてよかった、と思えるくらいのフィルムでした。


2003年12月8日(月曜日)
 帰り道、満月が綺麗だった。

 そんなこんなで、T-Engine用3D描画エンジン「Mascot Capsule Engine Micro3D Edition」登場です。Wireless T-Engineとか色々あるから、必要とされて用意されたって所でしょうか。
 明日、明後日と、TRONSHOWまで立て続くなぁ。

 朝鮮日報によると、「警察の電算網が全面麻痺」だそうで、様々な業務に影響が出ているようです。韓国警察庁のページにそれらしい情報は……これか?
 電気設備の保守点検の途中でデータベース機器がぶっ飛んで現在復旧作業中、って感じかなぁ。BONZさんあたり、ちゃんと読める方ヨロシク(^^;
 しかし障害発生が7日朝で、復旧予定が8日20時ってのは些か問題がないか? 日本は大丈夫なのかね。
 私の知る限り、日本の警察の電算網は各都道府県警を単位として、それを警察庁を介して繫がっているハズなので、警察庁がダウンしても県警単位では問題なく動く……とは思うのですが。
 韓国の警察は日本より中央集権型なのかな?

 警察組織というのは、国ごとに実に様々な形態があって、一国の常識が他国で全く通用しないものの一つだろう。それだけに、調べるととても面白い。
 去る11月12日にイラクのナシリアで自爆テロの被害に遭ったイタリア軍警察(カラビニエリ)だが、その訳語からは憲兵のように思われるが、実は独立軍であり歴史も長く、警察と同じように犯罪の取締を旨とする軍組織なのだそうだ。ちなみに警察は警察で別にあり、しかも別に住み分けをしているわけでもなく、全く同じ地区を警察とカラビニエリが同時に取り締まっていたりするらしい。なんじゃそりゃ。旅行ガイドなぞによると、総じてカラビニエリの方が対応が良いので、犯罪に遭った時はカラビニエリの方へ駆け込んだ方が良いとかなんとか。それって警察と仲が悪いんじゃないかと思うのだが、やはり仲はあまりよろしくないらしい。
 似たような例はフランスもそうで、通常の警察は基本的に都市部にのみ存在し、それ以外の場所は憲兵隊(ジェンダルムリ)が担当している。もっとも、フランスからの留学生に聞いたところでは、軍隊というより警察のように考えられているようだ。一応組織上は軍隊。
 スペインにも治安警察(カルディアシヴィル)と呼ばれる軍警察組織があり、警察には荷が重いような凶悪犯罪に対処しているそうな。ちなみに、海外にも派遣されてるらしい。
 ヨーロッパって、結構こんな感じで、軍に警察権をもった独立組織が存在し、平時に於いても治安維持の一翼を担っていることが多いみたいだ。
 そんだけ治安が悪かったと言うことなのか、そういう歴史を経てきたということなのか。
 米国などではさらに一段とワケが分からないが、合州国である以上はどうしようもないのだろう。

 翻って日本の現在は、各地方自治体毎に公安委員会を持ち、その監督下において各都道府県警が存在し、それらを纏め上げる形で警察庁が存在する。警察庁国家公安委員会が管理する形になっている。公安委員会が事実上殆ど機能していないのではないかという指摘はともかく、一応民主的に警察は管理されていることになっていて、軍警察に当たるものは存在しない。
 自衛隊には自衛隊内部の犯罪に対処する警務官が存在し、彼らは特別司法警察職員であるから、理屈の上では一般市民を相手にしても良いことにはなるが、まずそんなことはしない。(自衛隊と関る犯罪の場合くらいだろう)
 他にも厚生労働省麻薬取締官だとか法務省入国管理官、検事・検察事務官、海上保安庁保安官、国税庁監察官etc...の捜査官がいたりはするが、概ね一般市民がお世話になるのは警察であり、そういう意味では非常に判りやすい。
 かつては世界的名声を誇っていたらしい日本の警察も、昨今の治安悪化と不祥事の連続のために株価急落の体であるが、この上さらに治安対策として警察官が増員されると聞くと、質の低下に対する対策は大丈夫かいなと些か不安に思わなくもない。
 本来であれば各地方自治体の公安委員会が警察を管理監督せねばならないのだが、公安委員会はそういった実務が行える組織になっていないのだな、これが。監査なども命令だけで実際には警察が自分で自身を監査してるのが実情。
 順境にある時は問題が無かったのだろうが、昨今の状況を鑑みるに、公安委員会とその組織の拡充は考えても良いのではないかと思う。できれば中枢たる公安委員会は公選制にすると良いだろう。

 遺伝子操作技術がペット産業に利用されることは予想してたけど、こんなに早いとはねぇ……。ブラックライトで光るGlofishですか……。生命倫理の問題やら、生態系の問題やら、色々紛糾しとるようです。

 以前紹介した「Good Bye, Lenin!」ですが、先日European Film Academyによるヨーロッパ映画賞で6部門受賞とか。国内上映も決まったようで、今から楽しみです。


2003年12月9日(火曜日)part 1
 今日発表がないかもしれない、とのこと。
 ちょっと情報が錯綜しております。

2003年12月9日(火曜日)part 2
 結局報道発表はなくなったそうで。
 TRONSHOWになれば判ることだからいいんだけど。

 イラク人道復興支援特措法に基づく対応措置に関する基本計画は閣議を通過。いよいよ派遣は秒読みへ。
 基本計画に一応目を通しました。主力となる陸自については要員600名。過去の例から言うと「派遣大隊」として編成される可能性が高い人数ですね。階級的には一佐が指揮官ってとこですか。大隊の指揮官がなんで大佐やねんとかツッコミ入りそうですが、まあ、色々事情ってものがありまして。特に今回の派遣の場合、統合部隊のモデルケースという位置付けもあるので、空自海自の部隊も同時に指揮する以上は最低一佐でないと困るという話(護衛艦の艦長は通常一等海佐か二等海佐)
 車輛は装輪装甲車までかぁ……足りるかなぁ。個人的には89式装甲戦闘車くらいは必要じゃないかって思ってるんですが……。今日も車輛による自爆テロで米軍に被害が出てるんですが、突っ込んで来る爆薬搭載車輛を粉砕するには、35mmくらいないと厳しいんじゃないかと思うんですよ。せめて25mmの87式偵察警戒車とか。
 とにかく自衛隊員に犠牲が出ないことを祈るばかりですよ。

 やっぱり合体・分離・変形は男の浪漫だと思います

 火星探査機「のぞみ」の火星周回軌道への投入断念について。非常に残念です。不慮の事態にあっても、粘り強くここまでリカバーしたスタッフ一同の努力と奮鬪に敬意を表します。


2003年12月9日(火曜日)part 3
 わざわざパートを分けて。
 なぜかまだ続いているアイレディース宮殿黒川温泉ホテル問題で、「2003年12月8日 『言い過ぎた』発言に関して」という新たな文章が出たので。
県側では、宿泊予定者は既に元患者であり、感染する可能性はほとんど無いのだから、それをいちいち予約の段階で伝える必要は無いとコメントされているようですが、それならわざわざそのことを隠す必要も無かったわけで、ハンセン病に対する一般社会の認識からいえば、まだまだこのような状況は理解されないであろうという判断に基づくものであります。
 すいません、誰か読解力の足りない僕にも判るように解説して下さい。
 一瞬、Plain English Campaign Awards 2003でFoot in Mouth awardに輝いたRumsfeld国防長官の「Reports that say that something hasn't happened are always interesting to me, because as we know, there are known knowns; there are things we know we know. We also know there are known unknowns; that is to say we know there are some things we do not know. But there are also unknown unknowns — the ones we don't know we don't know」を思い出しました。あれ見た時ぁ、自分の英語力のなさを痛感しましたよ、ええ。何言ってるのかさっぱり分かんなくて。
 小熊の理解するところ、元患者はハンセン氏病が完治しているから「元患者」なわけで、「元患者」である以上、現在進行形でハンセン氏病に罹患しているわけではない。ですからそれはわざわざ言うの言わないの隠すの隠さないのという話ではなくて、ぶっちゃけ「どうでもいいこと」の筈です。その情報があろうとなかろうと対応に差がでるわけではない筈……なんだけどねぇ。
 それができなかったから、今回の問題がここまで尾を引いているわけですが。
 どうもこの辺は世代の差もあるらしくて、元患者が泊まると悪評が立ってキャンセルが出るだろうと推測する人もいる。
 差別解消の日は遠いなぁ。

2003年12月10日(水曜日)part 1
 んなわけで、T-Cube発表です。

2003年12月10日(水曜日)part 2
 原稿プロセッサも発表、と。
 他にもこまごまと発表がありましたが、TRONSHOWで展示されるんと違うかな。
 ちなみに、今日はレセプションなり。

2003年12月10日(水曜日)part 3
 あー。気疲れした。偉い人が一杯いるところなんて、肩身狭くてしゃぁないわな。
 私ゃあーゆーきらびやかな世界とは無縁な平凡な一市民なんですから。
 坂村先生に挨拶したら、「何でここにいるの?」とか言われたし(笑)。仕事に決まってんじゃん(爆)。

 ま、ほら、明日からTRONSHOWなんだし、何も今日この日記でリークするほどのこともないよね。
 早よ寝よ。


2003年12月11日(木曜日)
 TRONSHOW2004初日。

 寝不足なのか疲労なのか、初っ端のオープニングセッションから色々トバしている坂村先生。プレスがたくさん来てるところで何もマスコミへの不満をぶちまけなくてもいいだろうに……(笑)。
 内容は、追風参考記録、って感じですか。T-Engine周りで順風なのは良く分かりました。
 ICレコーダに録音して、自宅でCDに焼いてみた。結構聞けるわ。
 細かい内容については、マスコミ各社さんの方を見て頂くことにして、恐らくこの日記を読んでいる人の殆どが知りたかったであろうPMCブースの写真をいくつか。
 まずはT-Cube。こんな大きさです。左横に四つ開いている穴は通風孔です。その下がUSB、ビデオ出力。正面右にDC INがあって、そのとなりはLine IN/OUT。上にぽっかり開いているのはCFのスロット。その上は多分eTRONスロット。下にRJ45があります。隠れている面には、USBとRS232Cです。
 なんというか、詰め込めるから小さくしてみました的なデザインで、もう少し遊び心があっても良かったのではないかと。完全に立方体にしてみるとか、凹凸を作って積み重ねられるようするとか、電源をPoEから取るとか(爆)
 これが稼動状態のT-Cube。T-Kernel+T-Shell、つまり“ほぼ超漢字”が動いています。OSは突っ込まれているCFに入ってます。上面が結構熱くなっていて、素手で触っているのは難しいくらいの温度でした。上にコーヒーカップを載せろだの、熱燗を作れだのという意見がありました。
 T-Shellのコンソールを出していきなりfs -l叩いてみました。
 横にいた某人が「いきなりコンソールって、只者じゃないですね」とか言うので名乗ったら、すっかり納得された。なぜだ? 新しいバージョンを見たら、SYS/binをlsしたりするのは当然だろう……(違)。
 それはともかく、このFSはこれまでの超漢字のFSと同じ物のようです。未確認情報でFSが変更されて各種制限が緩和されるとかいう噂があったので期待していたのですが。
 展示されていたのに、気づいていない人も多かったらしいMozilla Firebird。
 ソースの表示やクリップボード経由のコピー&ペーストにも対応していた。ちなみに公開予定は未定とのこと。ていうか、これが実は一番喜ばれるんじゃないか?

 原稿プロセッサについては……まだまだ試作品段階ですからね。それに、実はあまり期待していなかったりして。原稿プロセッサって、プロのツールとしては結構いい線行ってるとは思うんだけど、プロじゃない人にとってはほとほと使い道のないソフトだと思うから。まあ、タグ付きテキストへ変換できるってのが、多少トピックかなぁ。あと、仮身が貼れないのは試作品だからではなくて、実身仮身マネージャの……(以下検閲)。
 出るとしたら、来年春くらいでしょう。少なくとも早々に出るものじゃありませんから、気をつけましょう。過度の期待は精神を蝕みますからね。

 坂村健‐村井純のセッションも面白かった。キーワードはずばり「なかよし」(爆笑)。ユビキタスIDセンターとオートIDラボが対立してはいないということをせっせと言い合っていた。共同実証実験をしようとか言ってました。


2003年12月12日(金曜日)
 お仕事でもう一度TRONSHOWへ……。

 お仕事の方を手早く片付けた後、PMCブースで原稿プロセッサをいじっていたら怒られた。ちょっとTAD教育ダンプでデータフォーマットを確認してただけじゃないか(爆)。
 そんなわけで、今日は写真はナシね。


2003年12月13日(土曜日)
 しんどい一日だった……。

 朝から、医者へ行って健康診断。私みたいな日雇いなんとかは、自分の懐から金払って健康診断を受けなければいけないわけでして、しかも健康保険が効かなかったり。この辺、日本の健康保険制度ってなんなんだろうとか思わなくもない。せめて検診と出産くらいは保険適用対象にすりゃいいのに……。
 その後、床屋へ行って散髮。
 戦前生まれのオヤジと、亡くなった外務省職員の話なんかをする。亡くなられたお二人を弔うことについて異存はないのだが、英雄を作られるのは困る。とても。
 その後、色々家事と雑事をこなしている間に時間が迫り、自転車に跨って一路銀座へ。
 NIFTY/FTRONの忘年会に参加。阿鼻叫喚の地獄絵図とはこのことか。自作のDJマシン持ち込む奴や換気扇の電源から盗電する奴やらスピーカーから坂村先生の法話(笑)を流す奴やら。なんだ、全部同一人物じゃないか(炸裂)。
 飛び入り参加で人数増やすわ、大声で喚き散らすわ、電波は漏らしまくるわの酷い集団で、お店に同情を禁じ得ませんでした。

 地獄が跳ねてから、有楽町へ移動してラスト・サムライの深夜上映を観に行きました。
 実上映時間2時間半(予告含めて3時間)という作品なんですが、充分元は取れました。余裕があったらもう一度観に行きたいところですが、上映時間を考えると流石に無理か。
 色々ツッコミ所は満載で、時代考証やら武士道論やらに逐一突っ込んでたら身が持ちませんので、そーゆーのはフィクションだから、とスルーして楽しむのが良いでしょう。現代では基本的に無価値とされる生き方に殉じる美学を、サムライという存在に假託しているわけです。
 主人公は南北戦争からインディアン討伐を経て退役した後にはアル中駄目人間になってて、これが日本への赴任を機会にサムライと出会って己を取り戻す……んですが、無茶苦茶な言い方をすると、なんで日本でサムライなのかな、と思わなくもないわけ。ぶっちゃけ、インディアンに捕まって彼らとの暮らしの中で己を取り戻しても良かったのよ。んで最後はインディアンと一緒に騎兵隊に突撃するとか。
 でもそれは多分ハリウッドでも禁則事項なんでしょうな。明治日本が旧弊を葬り去ろうとする姿は描けても、アンドリュー・ジャクソンのインディアン強制移住法は描けないわけだ。
 もちろんサムライを題材として選んだのは監督やプロデューサの趣味でしょうが、そういう視点からこの作品を見ると、米国と基本的に関係ないからこそ美しく描けたんだなぁというところもあるというお話。
 それにしても福本清三は良かった。立ってるだけで様になる役者ってのは、そうはいない。


2003年12月14日(日曜日)
 イラクのサダム・フセイン元大統領が拘束されたそうな。頼むから正当な裁判を受けさせて、死刑以外の刑で済んで欲しい。

 「Microsoft to Cut Swastikas from Fonts」ねぇ……。ざっと意味を取ると、最新のOfficeに附属する“Bookshelf Symbol 7”フォントの中に日本由来の卍マークが入っていて、それに不快感を示した顧客のために当該文字を削除するツールMicrosoftが提供した、という記事です。
 Microsoftプレスリリースを見ると、この問題についてMicrosoftは「error」と認識しているようです。非国際的な視点から見落とした、と。
 なんかの新手の冗談か?
 そもそも卍なんて仏教由来の漢字だし、地図上で寺社仏閣を示す記号として使われているわけです。外字フォントである“Bookshelf Symbol 7”ならず、日本のJIS X 0208はもとよりUnicodeにだって正規の文字として入ってます。なぜ“Bookshelf Symbol 7”からのみ削除されるのか、それがなぜ一方的な判断によって行われるのかについて日本に対し説明がないのは。一体どういうことなんですかね。
 流石にロイター電では、卍(swastika)は仏教由来のシンボルで仏教と共に世界各所で使われていること、ヒトラーがそれをナチ党のシンボルに流用したことが説明されています(この辺の情報提供の公正さが、流石と唸らされます)
 いろいろ調べたのですが、結局どこの誰さんがこのクレームをつけたのは分かりませんでした。しかしロイター電の最後の卍の説明は「according to the Los Angeles-based Simon Wiesenthal Center, an international Jewish human rights group.」となっているので、ユダヤ人団体とかそういうのではないのでしょう。
 一番何に腹が立つかって、日本語でこのニュースを伝える記事がないことだ!

 秋葉原にお買い物。
 セカンドマシンのモニタを液晶に切り替えようかと、液晶モニターを物色してきたんですが、良いものがなかった。とりあえず15インチクラスでドットピッチ0.25mm以下ってモノを希望してたんですが(炸裂)。
 表示域の大きさよりも、私はドットピッチを重視するクチで、大凡100dpi相当であるドットピッチ0.25mmくらいが要求水準となります。欲を言えば0.20mmくらいは欲しいところなんですが、そこまでは言わないでおいてやろうと(手加減)。
 なんか世間様の15インチ液晶モニターというのは、判で押したようにドットピッチが0.297mmなんですね。85.5dpiってのは何かの冗談か?
 一応カタログを漁ったところ、シャープLL-T1620ってのを出してるらしい。
 私の求める商品が市場にないのは、世の中が間違っているに違いない。

 秋葉原でVAIO X505の実機がデモってたので触ってみた。
 確かにちょっと感動するほど薄くて軽い。特に比重が軽く感じるのは驚き。人間は視覚から推測する体積情報と実重量の比が、単純重量よりも「重い/軽い」の判断に大きく作用するのですが、あれだけ体積が小さいのだから比重も重く感じるだろうと思っていたら、さに非ず。思った以上に軽く感じるのは純粋に驚きでした。
 キーボードも思ったほどは悪くない。長時間の入力には耐えられないでしょうが、短時間の持ち運びならこれでも充分かと。私の場合はぶっ壊しそうでしたが。
 あの値段の価値はある、と感じました。とても買えないけど。


2003年12月15日(月曜日)
 流石に12月も半ばになると寒ぃや!(自転車通勤者談)

 今日までだったんですが、「これからの時代に求められる国語力について−文化審議会国語分科会報告案−」へのパブリックコメントが募集されていました。いや、ちゃんとコメント出しはしたんですがね……先月期待していたほどの内容じゃなかったもんで。
 私の視点としては、自分が使っている言語に対する無関心無頓着が一番まずいと思うんですよ。なんとなく通じてればいい局面と、厳密に意味を特定しないとマズい局面ってものがあって、後者に出くわしたときに無為無策となる人が一番拙い。
 あと、漢字教育については、拔本的な見直しの時期だと思います。先日の「日本語をとりまく環境についての調査Justsytemで漢字使用機会が増えているという結果が出ていましたが、漢字制限の時代は終わってしまったんです。そりゃぁ、當用漢字を決めた頃にはそれなりの説得力があったのでしょうが、時代は流れ、かな漢字変換という強力な武器を手に入れた日本人にとっては、あまり意味のないものになり果てている観があります。社会的にも、「常用漢字を教えておけば事足れり」という時代ではなくなっています。今や「常用漢字は最低限度」なのです。
 こうなってくると、漢字教育を根底から考え直さないと、普通教育において常用漢字は教わったけど、社会は表外漢字の嵐であったなんて馬鹿気た話になりかねない。
 私個人としては、従来のように簡易な漢字から難解な漢字へ、学年毎に習う漢字を決めて……という丸暗記方式だけではなく、漢字を構造的に教えるアプローチも必要であろうと考えます。
 漢字は俗に六書と言いますが、その成り立ちに「象形」「指示」「会意」「形声」「転注」「仮借」の六つの類型を持つとされます。そのうち「会意」と「形声」が構造を持ち、「形声」は漢字そのものの大多数を占めます。いわゆる「偏」と「旁」の組み合わせになっている漢字だと思って頂ければOK。
 以前ちらっと書きましたが、「當・棠・黨(党)・堂・賞・裳・掌・嘗」など、一つ一つでは偏旁を直感的には分かちにくい文字も、並べてみれば一目瞭然だったりするわけです。
 他にも、
高膏亭亮毫亳豪
勝謄騰縢滕幐榺螣鰧黱
修悠條絛脩儵翛鯈
なんてのが並べられますね。
 こうなってくると目に付くのがのように常用漢字で線が一本減らされてる奴なんですけど、よくよく見渡すと、
殼轂愨彀榖糓縠觳鷇
てな具合で線が一本入っていた方が全体との整合性が取れることがわかったり。何を考えて一本線を取っ払ったのかは定かではありませんが、集合全体の整合性を失わせているという点では、余計なお世話ってもんですな。
 話が横道に逸れましたが、こういう例は他にも多々あるわけで、こういった構造性を利用した漢字教育というのも、考えて欲しいものだと思うわけです。

 えと、次は著作権分科会のパブリックコメント


2003年12月16日(火曜日)
 朝、風に巻かれて木の葉が天高く舞い上がるのを見る。
 向かい風じゃなかったら、素直に感動できたのになぁ……。

 住基ネットへの侵入実験の結果が出たとか出なかったとか。長野県のページにはまだ情報はないみたいだけど。新聞報道を見ている限りでは、ただひたすらに旧来の主張の繰り返しですな。
 現時点での小熊の見解は、「長野県総務省もお互い言っていることがおかしい」。

 著作権分科会の報告案を読んで提出意見をどうまとめようかと、徒然に。まだ十分に吟味された内容ではないのですが、考えをまとめるためにメモがてら。
 著作権法を含む知的財産権保護法制は、本来、知的財産を保護することによって、その知的財産を苗床として次の知的財産が育ち、それらがまた次の知的財産を育むという、正の循環を期待するものです。現存する知的財産だけではなく、将来の知的財産を含めて考えを巡らせないといけません。
 そういう視点からみると、著作権の存続期間は現在でも十分に長いと私は考えます。現行法では死後50年もしくは発表後50年、映画に限り70年です。欧米諸国に比べると短いことは確かですが、しかし実務に携わった経験から言いますと、これでも長すぎると思います。
 思考実験して欲しいのですが、人生80年と仮定して、ある著作権者が80歳で亡くなったとします。著作権継承者が直系卑属(子)だとすると、その年齢は50代という推定ができます。その著作権継承者がまた80歳で亡くなったとき、著作権の保護期間はまだ20年以上残っている計算になります。従ってその次の継承者を探さなければならないのですが、これまた都合のいいことに一親等直系卑属が継承したとします。最初の著作権者からみると孫に当たりますね。この人もこの時50歳くらいの筈です。なんとか死ぬまでには著作権は消尽するでしょうか。
 しかし現実にはこんなスムーズにいくことは希で、本人→配偶者→子→子の配偶者→孫→……と、死後50年の間に転々と4回も5回も継承者が代わることになります。子供がいなければ兄弟姉妹や甥や姪が継承者になることもそれほど珍しくありませんし、さらにその継承者ともなれば、「会ったこともなければ著作を読んだこともない人の著作権を継承なんかできない!」と言い出す人も出てきます。
 一方、著作権利用者の視点に立つと、一体今誰が著作権を継承しているのか、草の根分けて探し出す必要に駆られる場合が少なからず発生します。文藝家協会の会員・準会員などであればある程度追跡されていますが、そうでない人の著作権がどうなっているかなんて、誰も把握していないわけです。一応供託金制度なんてものがあったりはしますが、これを利用できるのは新聞広告等を打った後ですので、相当のお金が掛かった後ということになります。
 50年でもこの有り様なのに、これが70年になったときのことを考えると、眩暈がします。
 保護によって得られるであろう経済的利益と、保護によって費やされるであろう経済的損失の天秤は、現時点ですら極めて微妙だと思います。
 保護期間を伸ばしたいという著作権者の希望は分からんでもないのですが、正の循環を維持することをまず念頭においてバランスを取ってもらいたいものです。


2003年12月17日(水曜日)
 ライト兄弟がキティホークで空を飛んでから、今日で100年。まだ100年なんですよ。
 世界中のあちこちで記念行事や展示が計画されているようですが、日本でも西日本航空協会がライトフライヤーの復元をやってたりします。
 ビジネスの方でも、ホンダ試作ビジネスジェットが試験飛行したり、新明和のUS-1A改の試験飛行が近日予定されていたりと、色々嬉しかったり面白かったりするニュースがちらほら。
 中国も旅客機製造に乗り出すとかで、ブラジル・エンブラエル社との合弁で製造したERJ145を飛行させてました。
 そういえば日本のC-Xとかどうなってたっけ……?

 長野県住基ネットへの侵入実験の結果(速報)が出ましたんで、ささっと目を通しました。
 うーん。当初から危惧されていたこととはいえ、かなりヤバいねぇ。事実上住基ネットに繫がった各自治体に不正情報流し放題ってことですから、存在しない人間の一人や二人、作れそうですよ。
 本来なら総務省は欺瞞情報を送られたりしないように、十分に安全が確保できない自治体を住基ネットに接続しないという判断を行わねばならない筈だと思うんだが……。
 長野県側は、どう考えても自分たちの落ち度の話だから、得々と「住基ネットが」とか言う前に手前ぇら反省しろよ少しはってトコロですし。
 はあ。危機管理すら政争の道具ですか。それで実害を被るのが誰だと思ってるんだか。

 ネットワーク障害というと、先日書いた韓国警察庁ですが、15日にまた別件の障害を起こしていたそうです。最近IT先進国とかで華やかに紹介されることの多い韓国ですが、紹介するならするで、こういった問題もまた同時に報告しないと、前車の轍を踏みかねないと危惧します。
 日経コンピュータあたりで特集してくれんものかな?

 中国からは、買春容疑で14人が有罪、日本人3人が手配と報じられてますな。「$AVi:#Br4:08#:14$AHK1;EPPL 3$AC{HU1>HK1;M(<)」と、見事に社名から個人名まで載ってらぁ。
 女が買いたいなら、売春が合法な国へ行けばいいのに、なにも禁止されてる国で法を犯さんでも……とか思う一方で、日本国内でも売春を合法化してはいかがかと思いますね。今の日本って、売春産業が地下化した関係で、犯罪組織は絡むわ未成年者売春は野放しだわ性感染症は蔓延するわで、かなりロクでもない状況に陥ってますから。陽の当たるところに引きずり出して虫干しが必要だと思いますわ。
 特に怖いのは性感染症の蔓延でね。国連の報告書に書かれたクラミジアってのは氷山の一角でね、他の資料とも付き合わせると、結構大変な状況なんじゃないかって思いますが。お金払って安全に性欲処理ができるとなれば、わざわざ非合法でヤバくて性感染症の危険のある売春には手を出さないでしょ?
 もっと非道くなってからだと、どこぞの国みたいに、安全な使い捨て注射針をヤク中どもに配って歩く羽目になりかねませんからね。

 ここ数年、問題続発だった三菱自工三菱ふそうですが、「ふそうエアロスター、エアロバス、エアロクイーンのABS制御装置の改善対策実施について」については同情しちゃいました。
 日経エレクトロニクス記事によれば、問題の「想定外の不正な高出力電波」とやらは「出力3500W以上の電波を数mほどの距離から放射した場合」なんだそうで。
 出力3,500Wってなによ? 放送電波かなにかか?
 希にね、違法無線積んだトラックが通るとスピーカーが勝手に無線拾ったりしますけど、ABSが異常動作してブレーキが効かなくなるなんてのはちょっと冗談じゃない。すぐさま必要な処置を取って、違法無線を積んだ馬鹿どもを道路交通法と電波法の両方で逮捕すべきですね。
 自分の運転する車が突然暴走したりしたら、洒落にならん。


2003年12月18日(木曜日)
 US-1A改は無事初飛行に成功したそうです。

 NHKスペシャル「シリーズ安全保障 第1回 徹底検証・日本の備え」を観た。
 現状のリポートはともかく、その認識のしかたには大きな問題を感じた。
 「テロ」と「弾道ミサイル」は自衛隊にとって新たな対象であることは確かだが、別にそれ自体の脅威が最近日本に降りかかってきたわけでもなければ、アルカイダや北朝鮮ばかりが仮想敵じゃない。テロならアルカイダより国内の馬鹿どもを疑うのが先だし、弾道ミサイルなら北朝鮮なんぞより数万発の核弾頭付きを世界中に向けてる馬鹿をどうにかせんとあかん。どちらも今に始まったことじゃないって辺りは一緒だわな。
 小熊の理解するところでは、国内の馬鹿どもは基本的に警察の公安部がこれまで担当してきていたが、サリンやVXを作った連中を見逃した上に、それ以上のことをやらかす輩を止めるには現在の警察力では足りないという認識が浸透したということだろう。弾道ミサイル馬鹿については、核弾頭付きの弾道ミサイルが飛び交う事態になったら国民の安全どうこうより一子相伝の暗殺拳の跡目争いが心配だとか思っていたところに、たまたま通常弾頭弾道ミサイルという報復兵器二号レベルの連中が出てきたのでこいつらなら撃ち落とせるかも♪と張り切っているといったところではなかろうか。
 仮想敵は仮想敵でいいんですけど、設定された仮想敵に惑わされて、それらが本当のところ誰にとって最も不利益になるかというのは、気に留めておいた方が無難でしょうな。

 8日の記事、BONZさんが本当に訳してくださったので掲載です。

[交通]交通電算システム障害関連告知事項

-障害概要
日時: 2003.12.7(日)、05:30 -現在まで
障害概要:庁舍電気設備安全点検による停電により、交通電算システムをダウンさせた後、システムを再稼動させたが、電源による損傷で保存装置が正常に稼動されていない。

*メインサーバーは正常作動中です。

-その間措置内容
システム復旧:維持補修業社に非常通報後、担当者出動、保存装置にエラーが発生するのでシステム装置部品を入れ替えてみたが、正確な原因不明で復旧が遅延している。

-運転免許試験場及び各地方警察庁措置
当システム復旧の前まで、運転免許試験業務は手作業で進行し、一部業務を除き、業務遂行に大きい支障は無い。

*当日発給ができなくなっている業務
運転免許証、国際運転免許証、運転経歴証明書 発給

-本日の措置計画: 運転免許試験関連業務正常処理
新規免許発給(1日1,000人余り):臨時運転証明書発給、本免許証は復旧の後、郵便通報予定
国際運転免許証:本人の免許証確認後直ちに発給
運転経歴証明書:本人の陳述に基づいて発給後、後に復旧した時に真偽を確認して知らせるように措置

※試験場、各警察署で業務は正常に処理されているので、問合せして下さるよう願います。


2003年12月19日(金曜日)
 あまりの忙しさに目が回りそうだ……っていうか、本当に回ってたような気がするな。
 明らかに体調おかしかったし(苦笑)。
 というわけで、今日の日記は生存報告。

2003年12月20日(土曜日)
 なんかしなきゃいけないことが山積みなのに、体は一つで一日は24時間って辺りそろそろ限界のような物を感じる今日この頃。
 キートップを全部取っ外してキーボードの分解清掃もしたいんだけどね……。時間なくて。

 キーボードと言えば、東プレRealforce 89を買いました。日常使うにはややキーが軽いのですが、セカンドマシン用のコンパクトキーボードなら充分でしょう。
 で、値段が15,000円+TAXだったんですが、その後神保町で遭遇した竹居さんが「キーボードに15,000円を払うことに納得する人がどれだけいるか」と言っていた。そういう竹居さんはRealforce 106を愛用しているので、職場であまり理解されないという話。私に至っては25,000円ですからねぇ、一枚。私としては、IBM 5576-A01はそれだけの価値のあるキーボードだと思っていますが、世間様一般には理解されない趣味だと言われても仕方ない。
 しかしどーしても世間で売られている2,000円くらいのキーボードは使いにくくて仕方ない。打鍵と同時にキーボード本体が歪むのがわかるのはかなりきつい。ノートパソコンになれば殆ど「論外」で、一年あればキーボードが壊れてしまう。いくら私がハードパンチャーだといってもこれはあんまりだろう。

 昨日のことになりますが、日本が弾道ミサイル防衛システム(BMD)の導入を決めました。これに応じて、各自衛隊の既存部隊等の縮小が指示されています。
 なんだかなぁ……。
 弾道ミサイルなんぞ防げなくてもいいけど、正面火砲や護衛艦、邀撃機が無かったら、戦争にならんのだけど。「21世紀のマジノ線」って将来言われるぞ、きっと。
 昨今の技術進歩によって、弾道ミサイルも条件が揃えば迎撃が可能となりつつあります。それは事実です。しかし、それが費用対効果が充分に見合うかと言われると、今のところ答は否です。
 ちょっと想像すりゃ分かりますが、ミサイルを射つ側は日本全国どこでも狙えるわけです。勿論、大都市を中心に狙うでしょうが、では守る側が大都市だけを守っていればいいのかと言われると、恐らく不満の声が出るでしょう。日本全国人の住んでいるところを隈なくBMDで守れるのか、と言われるとやっぱり答は否でしょうよ。そして一番問題なのは、BMDは通常兵力の代替にはならないことです。
 BMDには海上警備行動は採れませんし、スクランブルで侵入機を追い返すことも、上陸した敵を迎え撃つこともできません。どっちが重要かなんて、考えるまでもないと思うんですがね。
 専守防衛というお題目からすればBMDは都合のいいシロモノでしょうけど、それを導入するために既存の自衛隊の規模縮小をしなければならないというのであれば、考え直した方がいいようなものです。弾道ミサイルなんて、核弾頭でなければ100発やそこら射ち込まれても、被害なんぞ高が知れています。被害に遭ったときは「運が悪かった」と諦めた方が理に叶っていると思います。
 つまり、自分を含めて、その覚悟をして生きろという話になってしまうんですが。


2003年12月21日(日曜日)
 風邪引いちまったよ……。

 平成16年度予算財務省原案で、「しらせ」後継艦の予算がゼロ査定だったらしい。
 マジですか。
 報道では、修理で使用可と見なしたそうなんですが……総合科学技術会議の報告読んでないのか? 一体なんのための審議だったんだ……。
 それとも砕氷船なしで南極観測をやれっていうのかね? 隣の韓国みたいに。それで人死にが出たら英雄にすればいいとか思ってんのかしら。
 無駄は削ってもいいけど、必要な所や、余裕を削っちゃ駄目なんだけど、財務省にはその区別がついていない可能性大。

 一方で文部科学省はロケットの射上げ順延を発表してます。まあ、一発失敗してますからねぇ。しかも次からはまた補助ロケットの設計が一部変更があったりで、それほど問題ではないんですよ、射上げ延期自体は。
 ただ、これによって運輸多目的衛星(気象衛星「ひまわり」の後継衛星)の射上げまで延期されたことが問題ですな。もっとも、これは製造元とのトラブルでどっちにしろ延期するしかなかったんですが。
 問題はずっと前にあって、要するに必要な時期に必要な処置を取らなかったから今になってこんな体たらくなわけです。本当なら、当時の関係者の責任問題に発展していてもおかしくないんですがね……。
 私たちのこの便利な社会は、実は非常に気象予報と密接に結びついていて、特に小売、流通業や外食産業などでは天気予報によって商品の店頭在庫や流通量の調整等を行いますので、外れるとそれだけで損失が出ちゃうんですよね。天候デリバティブなどの形で気象による変動を均質化しようとしているのはよく知られています
 そういう社会に暮らしているという事実に鑑みれば、気象衛星はどう考えても社会インフラなんです。二重化は当たり前でしょう。それを耐用年数を過ぎてからも働かせ続けた挙げ句ロケットの失敗に備えていなかったのは、政府レベルでの責任を問われても致し方ありますまい。

 トップの責任と言いますと、とうとうアイスター全面降伏したようです。過去の文書が全部消去されて、お詫び文が掲示されているんですが……トップの判断ミスがこれだけの大騒ぎになり、結果的に会社のイメージを大きく損なったことは、株主代表訴訟を招いていてもおかしくなかったところです。
 今回の一件、ハンセン氏病とは関係ないところで、大きな問題を残しました。
 小熊は、実は一番最初の判断自体は、無知に基づく偏見としてさっさと処分してしまえば良かったと思ってるんです。最初の間違いだけは予防しようないし。でも間違いを犯したと思ったのであれば、即座にリカバーに走らないといけないわけです。被害を徒に大きくすることなく、最小限の被害に收めること、可能ならばそれをチャンスにして逆転プラスに繫げる……そういった危機対処能力が試されたんですが、この会社の場合、落第点ですな、完全に。
 で、こういうのを経営トップにつけといた(少なくとも経営陣に危機対処能力がない)状況って、結構遍在してるように思いません?


2003年12月22日(月曜日)
 復活折衝で「しらせ」後継艦の予算が設計費だけですが復活しました。
 でもまだ予断は禁物。

 日本で手配された犯人が中国で捕まって裁判にかけられたり、逆に中国で買春した日本人が国際指名手配されたりと、色々動きの多い日中公安関係ですが、この度駐日中国大使館に警察連絡官が赴任しました。これまで以上に密接な連携が期待されます。
 問題はこの先、犯人引渡条約を結ぶかどうかですね。
 実はこれは国際的に難しい問題を孕んでいて、犯人の引渡には、両国の量刑がほぼ同等であるこという前提があるんです。この点、中国は日本に比べ刑法犯の量刑が重いため、一概に引渡ができないという事情があったりします(日本では死刑にならない犯罪者が中国に引渡されたために死刑になったなどとなると、憲法に保証された人権問題にも発展しかねない)。何の事件だったか、確か北欧の国だったと記憶しますが、日本が死刑制度があることを理由に犯人の引渡を受けられなかったこともあります。
 今回の警察連絡官の着任は、犯人引渡はともかくとして、現実として両国間に存在する犯罪問題を中国政府が軽視してはいないことを示す行動だったりします。
 中国にとって日本は大切な投資元であり、科学技術の輸入元であり、ODAでうなるほどの金を恵んでくれて、そして多くの留学生を受け入れています。日本の対中国感情の悪化は避けねばならぬという実に分かりやすい構図です。
 日本としては、今後も中国人留学生を受け入れ続けたい筈だと思っているのですが、この辺かなり自信がありません。留学生を通じての人的コネクションの確保はどう考えても重要ですし、良くも悪くも文化的影響力を維持しようとするなら、やはり人を受け入れるしかありません。相手国にて日本語を解する人口が即ち影響力となるのですから。犯罪行為に手を染めている外国人の中に留学生が占める割合が大きくなっているという事情はあるのですが、これを力ずくで取り締まるばかりではなく、将来を考え長期的展望を持って事に当たって貰いたいものです。

 中国というと、台湾の台湾積體電路製造が中国の$AVPP>9z訴えたなんて報道がありましたけど、これがまた法廷が米国はカリフォルニア北部地区連邦地方裁判所だったり(笑)。
 「国内問題」なんじゃないのかと他人事ながら突っ込んでみたり(爆)。

 小中学生の携帯電話市場調査概要だけ見てもううんざり。調査報告本体80万円だそうですが……。
 ここで調査対象になった小中学生が、将来「ケータイを持った猿」化していくのかと思うと、私ゃもう言葉がないですよ。なんだよ一体大人の平均額を超えるパケット料を使う中学生ってのは……。市場として開拓すりゃいいって問題じゃないだろうよ。メソポタミアの塩田になるぞ。

 著作権分科会へのパブリックコメントは24日までだっけか……。


2003年12月23日(火曜日)
 名古屋のテレビ塔から紙幣をばらまいた男が出たとか。
 年の瀬だねぇ……。

 明治生命名前ランキング2003見てて思うんだけど、こんな名前アリかよ、ってのが結構ランキング上位に入ってますね。特に男の子の名前に、無意味というか漢字の字面しか見てねぇだろっていう感じの名前が多いように見えます。一概に悪いとは言わないけど、名前に込められた想いは読み取りにくいと思います。
 生まれ年別ランキングを見ると、昭和50年代くらいから名前が“語”として意味を持たない傾向が強くなってきているのがわかります。親の年代を考えると、漢字・漢文教育の低下と同期しているのではないかと直感するのですが、この辺りについては研究とかなかったか……。
 出生届に使用できる漢字が制限されているのは周知のとおりですが、この現象は漢字制限とは無縁のところで漢語能力の低下が進行していることを推察させます。古典漢籍への造詣が浅ければ、語としての漢字の組合わせではなく、文字としての漢字の組合わせしかできなくなりますから、畢竟、単漢字単位の意味は推し量れても、語として成立し難い名前が増えてしまうのではないか。
 そういえば文化や伝統に煩い、たとえば夫婦別姓に反対しているような議員さんたちはこういう現象には文句を言わないのですかね。フランスなんかでは、歴史上存在した名前でなければ名付けることができない、なんて制限があったりして、無暗に新しい名前が創出されることを制度として制限していたりするのですが(良し悪しは別としてね)。
 もっとも日本の場合、伝統へ回帰するとなると、目茶苦茶になってしまいますけど(笑)。幼名から始まって、一生の間に節目節目で改名することはもとより、氏と姓と家名が全部違ったり、冠が付いたり位階が付いたり、出家して法名が付いたり、さらには筆名や俳号を持っていたりで、複雑怪奇極まりないんですから。


2003年12月24日(水曜日)
 てんてんてん、「和民」の「民」には点がある……(鬼)。

 米国で、牛海綿状脳症(狂牛病)が出たとかで、日本では米国からの牛肉の輸入禁止処置がとられたりなんたり。米国内でもパニックにならないようにとかテロの可能性は低いだとかアナウンスが出てます。米農務省の動きも素早い。
 しかし……米国にとって日本は最大の牛肉輸出国だったんですけど、米国内の畜産業や日本国内の牛肉需給とか、心配しなきゃいけないところが沢山ありそう。
 「アメリカ牛は安全」とかさんざんっぱら言ってたからなぁ。国内の外食産業もけったいな影響を受けるんと違うかな。残る「安全な牛肉」とやらはオーストラリア産だけかね?
 輸入検疫体制から、狂牛病に罹った牛の肉の輸入を禁ずる、あるいはそのために一時的に輸入を停止するのは妥当だと思うんですが、一体いつまで続けりゃ気が済むんですかね。もちろん、狂牛病と新変異型クロイツフェルトヤコブ病(nvCJD)との間の相関関係が疑われている以上は、こういった防疫体制もやむなしではあるんですが、一方で「その国で発生してないから」とその検疫を素通りする牛肉があるってのも不可思議な話でございまして。
 本当に異常プリオンが経口摂取で伝染(?)するのかとか、牛の異常プリオンをどのくらい摂取したらnvCJDに罹るのか、そのメカニズムは、治療方法はetc...は殆ど謎。こんな現状では、牛肉を食べる文化を捨てない限り、どこかで妥協して生きるしかないような案件だという気はしているのですが、妥協点の模索ってされてるんですかね。なんかこう、ヒステリックに反応しているような気がします。
 冷静に議論したいなぁ、この問題も。

 冬コミが近づいてくる。だれか時間をくれ!


2003年12月25日(木曜日)
 あなたの周りに、今日がクリスマスなんだよ、ってツッコミを入れなきゃいけない所はありませんでしたか?

 コミケ三日前にして絶望的な戦いを繰り広げております
 全てを諦めて寝てしまえれば、どれだけ素敵だろうか。
 というわけで、角川の新刊を総攫えしてきたけど読む時間が取れない全然。


2003年12月26日(金曜日)
 仕事納め後の納会にみんなが繰り出したあとの伽藍としたオフィスで一人バックアップを取るワタシ……。

 三菱総研が「ソフトウェア開発事業者のオープンソースへの取り組みに関する調査を実施 〜オープンソースへの取り組みは進みつつあるが、多くの事業者において経営資源は逼迫〜」なんてレポートを出しました。
 “三年後にサーバOSの全面Linux化を仮定”した場合、開発人件費の上昇が開発収入の増加分を上回り、利益率が低下するというシミュレーションです。
 「サーバOSの全面Linux化」という仮定が妥当かどうかは議論のあるところでしょうが、オープンソース礼賛の渦の中で着々と進行しているIT産業の焼畑農業化とでも言うべき状況を射抜いているように思います。この調査で浮彫りになっているのは、人的資源の供給不足なわけです。
 一方で、同じ三菱総研が「FLOSS-JPオープンソース / フリーソフトウェア開発者オンライン調査日本版」なんて調査をやっています。まだ詳しい分析はまだですが、速報版のなかに、「(Q26)OS/FSの開発に関する知識は主にどこで学びましたか? 」という質問項目があり、「独学:62.5%」だったりします。もうひとつ、「(Q36) OS/FSに関連した収入源はありますか?」では「ない:73.2%」と、これまた凄い状態です。
 日本ではオープンソース/フリーソフト関連の知識技能は独学で学び、かつそれらへの貢献は全くの手弁当で行うのが常態である、ということになります。これでは、オープンソース関連の人的資源がどこからか供給されることを期待する方がおかしいってもんですわ。
 しかしオープンソースだLinuxだという世の潮流は濁流となって業界を飲み込みつつあり、社内で人材を育成し、かつ囲い込めるだけの体力のない会社において、土建の下請け・孫請け並みの悲惨なIT戦士たちが連日連夜プロジェクトXを繰り広げることになるのではないかと危惧します。
 今と大差ないじゃん、という意見もあるかも知れませんが。

 厚生労働省のサイト内にソースが見つけられなかったんですが、読売新聞に「「この若者、礼儀作法保証します」…厚労省が認証制度なんて報道があって、なんだかなぁ、と。
 企業に人を見る目がないのか、あるいは礼儀作法程度しか売り物のない若者が多いということなのか。公教育制度において本来保証されるべき卒業生の品質を、文部科学省に成り代わって厚生労働省がやろうって話ですから、非道いもんです。税金の無駄遣いですね。文科省がきちんと仕事してれば必要ない仕事なんですから。
 ほっとくと、公教育制度の是非を論じなきゃいけなくなるぞ。


2003年12月29日(月曜日)
 就寝を以て一日の区切りとし、寝床を前にして日々の過ぎたる様を綴るのが日記だというならば、寝なかった日の日記はいつ書けば良いのだろう。

 そんな哲学的(?)な悩みを抱えてしまいそうなここ数日でした。
 いや、毎回コミケ前は忙しいんですけどね。今回は特に……。
 自分の原稿は書かにゃならん、他人の原稿は見にゃならん、てつまさんの新刊の編輯印刷を引き受けてるけど原稿が来たのが27日とか(笑)、CD-Rを焼きっぱなしのドライブからは異音が聞こえ始めたり、耐久テストばりにひたすらに印刷を続けるcp1700とか。
 実際、自分が何やってたか、殆ど記憶がなくて、とにかく作業に追いまくられていましたよ。
 ……。
 そうか! 「目紛るしい」とはこういう時にこそ使う言葉であったか!
 それはともかく、貫徹明けで初日に参加することになったのはいいのですが、本当は午前6時から並ぶつもりだったのが、「作業を続けんとモノが揃わん!」という状態に陥り、9時までひたすら自宅で作業。徹夜した挙げ句9時までやらなあかん作業ってなんやねん、と自分で突っ込み入れたかったり。
 そんなこんなで初日が始まりまして、委託をお願いしたサークルに顏を出したりなんたりして会場を一回りして家に戻りましたが、なぜかその時、時刻は既に16時になっておりまして、なんとか残る力を振り絞って連絡メールを出したところでグロッキー。17時半頃に沈没しました。
 そして翌朝、つまり今朝ですが、起きたらなんと5時30分!(爆裂)。12時間ぶっ続けで寝てたことになります。
 急いで支度をして出かけましたとも!
 とはいえ今日はサークル入場。それ程焦らずに入場できました。

 今回新刊を落としてしまったのですが、その原因となったのは音楽CDでして、今日のお客は殆どそっち方面でした。あ、もちろん「新刊はないんですか?」と言ってくださる方も来てくださったのですが、最早平身低頭で謝るだけでございました。次のコミティアまでにはなんとか……。幸いと言うか不幸にもと言うべきか、音楽CDの方は14時時点で品切れ御免となりまして、明日の配布場所をお知らせすることに。
 他にもデジカメを床に落として昇天させたりしたのですが、概ね順調な一日でした。

 帰りに秋葉原に寄って、デジタルカメラを新規調達。
 条件が、

  1. XGAくらいの解像度
  2. マクロ撮影機能
  3. 乾電池使用可
  4. 価格は3万円程度
だったので、KONICA MINOLTADiMAGE X20を撰択。ちょっとボタンが少ない関係で、操作性にやや難がないでもないが、許容範囲。それよりこの単三電池ぎりぎりの厚みが良い。
 旧ミノルタ系のデジタルカメラは多くが単三乾電池使用可で、個人的に好感を持っていたのだが、最新機種では、とうとう専用充電池になりつつあるらしい。こういうスナップ系のデジタルカメラはいつでもどこでも使えることがウリなので、国内であれば調達が非常に容易である乾電池を使用できることは大きな利点であるはずなのだが……。もちろん、それによってデザインや駆動時間に制限ができることは知っているのだが、デザインはともかく、駆動時間に関してはそのための調達容易性なわけでして……。個人的にはもう少し頑張って欲しいところ。

 それはともかく、明日は三日目。準備がまだ終わらない。


2003年12月31日(水曜日)
 再び一日おいての日記です。

 30日コミケ三日目。とある事情からサークルチケットでの入場。THANX A LOT>その方
 っつーか、クレヨン社関係が予想外の反応で、徹夜で増刷を繰り返してハンドキャリーで持ち込みという状態でして、さらに日中はクレヨン社ファンを自称するサークルさんに行商を繰り広げ、自分の買い物そっちのけ。かなり多くのサークルを諦めました。
 家に帰り着けば、今度はメールによる郵送処理。
 徹夜明けでズタボロになって、日記を書かねばという意思はあっても既に体は動かなかった。

 んなわけで、大晦日を迎えたわけです。
 家の掃除をして、洗濯をして、蕎麦(雑煮兼用)の汁を作り、CD-Rやら封筒やら紙やら糊やらを買いに自転車を池袋に走らせ、たまったビデオを消費し、未読はまだ削れてないけど、なんとか平和に一日が終わりそう。
 あ、FTRONのチャットに参加せんとね。

 冬コミでうちの本を買っていってくださった方の日記に、「読書速度測定」が紹介されていたので、ちょっと試してみる。
 『あなたの読書速度は 1280字/分 です。』だそうな。日本人の平均は越えているけど、驚くほどじゃないらしい。
 個人的にはもうちょっと早く読めるようになりたいと思わなくもないのだけれど、一層の読書速度の向上が経済的負担に直結しそうなところがヤな予感満載。