人外
〜JIN-GAI〜

以下の文章は全てフィクションです。実在する人物団体地名によく似たものが出てくるかもしれませんが、それは全て気のせいであり、全く無関係であります。

Caution!
このページはあくまで小熊善之個人の責任において製作されており、坂村健先生及びTRONプロジェクトは関与しておりません。


 あの決定的な敗戦から十数年――。
 NEC統治下の混迷からようやく拔け出し、国際社会への復帰を図るべく「国際化」の名の下に強行された急速なMicrosoft化がその実を結びつつある一方で、この国は多くの病根を抱えていた
 強引なダウンサイジングが生み出したSE崩れの群れ、そのPC流入によるカオス化を温床として激増した組織的MS化、改革を唱えてMS製品を売り捌く無政府勢力の台頭。
 これらの勢力に対抗すべく密かに時期を窺っていたThe Realtime Operating-system Nucleus、通称斗論は、しかしその誕生のときから苦難の道を歩むべき宿命を負っていた。
 わけてもTRONの実戦部隊をなす斗論者は、その過剰とも言える戦鬪力と急進的な主張ゆえに多くの敵対勢力との鬪争を余儀なくされていた。
 当面の敵であるMS族。
 TRONを解体し、国家規格への道を窺う文字コード論者。
 TRONを無政府勢力として警戒する国家政府。
 そしてTRON存亡の危機を回避すべく、斗論者切り離しを画策するTRON上層部。
 特殊技能と逸般常識で武装し、「人外」の俗称で後ろ指をさされ続けた斗論者の精鋭達も、その歴史的使命を終え、時代は彼らに新たな、そして最終的な役割を与えようとしていた……。
「なあ、連中との共同文字コード体制の推進なんて無駄はやめちまえ。連中とは所詮水と油だ。合わせてみても、濁って浮き上がっちまうのは俺たちだけさ」
「『新しい酒は新しい皮袋に』か十五年前の俺たちの合言葉だったな」
「今でも、だ」

たとえ相手が誰であれ、我々の前に立ち塞がり、我々の使命を妨げる者は、どれほどの犠牲を払おうと断乎としてこれを撃滅する」
「立ち塞がる者あればこれを撃て」